2025年7月15日
お得意様 各位
『ミャンマー(ヤンゴン)情報』2025年7月報
《2021年1月に勃発した軍事クーデター以降、ミャンマー情勢をお気にかけられている方々より、
お問合せを頂いております。ご厚誼を賜っている方々に、ヤンゴン駐在の社員からのレポートを
基に、2ヵ月毎に報告をさせて頂いています。 お時間がお有りでしたら、お読み下さいませ。》
ミャンマーチーク販売株式会社
代表取締役 臼井 成美
梅雨明けはまだですが、連日、蒸し暑い夏日です。梅雨明けと共に一気に真夏になると言われています。
雨も少なく高温の日々が到来するのでしょうか? 御自愛下さい。
さて、2013年に始まった林野庁の『国産木材活用キャンペーン』により、輸入木材である弊社のチーク材
が、文教施設や公共施設にスペックインして頂けなくなり、需要低迷期が続いていましたが、最近漸く、幼児
施設や文教施設にご採用頂ける機運が出て参りました。2025年4月以降、既に、8千万円余の引合いを頂いて
います。
幸い、ヤンゴン工場は地震の被害は皆無でした。従業員や協力会社にも被害を被った者も居らず良質な原木
も、確保出来ていますので、従来に増して精度の高い製品をお届け出来ると思っています。
ヤンゴンはモンスーンの真っただ中、連日雨です。雨により、気温が下がり、エヤコンの使用率が下がり、
停電が少なくなり市民生活は楽になっています。では、7月のミャンマー(ヤンゴン)情報をお届け致します。
【80歳になったスーチー女史】
80歳になりました。国軍の厳重な監視下におかれていますが、読書や黙想に努められており、元気に
お過ごしのようです。来年?に予定されている総選挙への影響力は如何でしょうか?
【大地震後の市民生活】
ミャンマー中西部で発生したマグニチュード7.7の大地震は、それ以降も200回程の余震が有り、家屋や
インフラに大きなダメージを与え、被災者は650万人と言われています。地域の790の病院が損壊・破壊され、
保険医療体制は崩壊しています。軍政府の復旧対策は進みません。7月に入り、本格的なモンスーン期になり
ましたが、地震で破壊されたトイレの復旧が進まず、衛生環境は劣悪です。急性水様性下痢の流行が心配です。
倒壊した家屋の撤去はボランティア活動に依存している現状です。又、ボランティアによって井戸の復旧が
進められ、首都ネピード周辺では120基の井戸の復旧に成功しています。
首都ネピードでは家屋の倒壊が激しく、公務員社宅も多数崩壊し、多くの犠牲者が出ました。その為、行政に
(許認可)支障が出ています。公務員の80%は公務員社宅に住んでいましたが、軍政府による復旧工事が
進まず、住む場所を無くした公務員が退職してネピードを去っています。更に行政が停滞するのではないか?
心配です。ヤンゴン市内は地震の被害は殆どありませんでした。地震直後の数日間、停電が頻繁になった
程度でした。電話回線やインターネット回線も問題有りませんでした。ヤンゴン工場の従業員の有志が
チームを組み、被災地に出向き、進まぬ倒壊家屋の解体や撤去工事の支援活動をしています、
生活に少し余裕のある人々が被災者テントを尋ね、飲料水と食料品それに医薬品を配布しているそうです。
公的支援が期待できない為でしょうか?仏教の教えでしょうか?ミャンマー人の助け合い精神が嬉しいですね。
【地震後の紛争地域の変化と和平の動き】
軍事政権は地震当日も空爆を止めず、世界の顰蹙を買いました。地震後も紛争地域への攻撃を続けています。
シャン州南東部のミヤワディとタイ側メーソートは以前から国境貿易の要衝でした。従来は政府軍が統治して
いましたが、今春から民主派武装勢力が統治しています。国軍が敗退した結果です。このミャワディは国際詐欺
グループの拠点がある場所です。ミャンマー人のタイへの越境就労が最も多い処です。
中国との国境貿易の要衝はシャン州北東部のムセとモンラーです。何れも民主派武装勢力により国軍が追われ
ました。国軍は大きな収入源を失った事になります。国軍は中国政府に働きかけ、この2ヵ所の国境貿易検問所を
閉鎖させました。ミャンマー国軍の依頼に基づき、中国政府が国境貿易窓口を閉鎖し民主派武装勢力が利益を
享受出来なくさせたのだと言われています。中国政府の介入が気になります。
このように主要な紛争地域では民主派武装勢力の優勢が報じられていますが、軍政府の中国軍を巻き込んだ
作戦が成功し、国軍が巻き返しを図り、東部のモンラーは国軍に奪回されたようです。和平の兆しは見えません!
先日、岩谷外務大臣が『ミャンマー情勢に改善の兆しが見られず、多くの国民の生活に甚大な影響を与えて
いる事を懸念すると共に、極めて遺憾に思う。ミャンマー国軍が平和的な問題の解決に向けて取り組むことなく、
空爆等の暴力によって多くの市民が日々死傷している状況を強く非難する』と話し、その上で『ミャンマー国軍に
対して暴力を直ちに停止すると共に、アウン・サン・スー・チー氏を含む全ての当事者を解放し、平和的な問題
解決に、具体的な取り組むよう強く求める』との声明を出しましたが、具体的なアクションは?
【総選挙について】
3月27日に首都ネピードで旧日本軍に対して蜂起した日を祈念した大規模な軍事パレードが行われました。
軍トップの司令官は、紛争当事者の民主派武装勢力に対話による解決を求めた上で、今年の12月か来年の1月に
総選挙を行い、民政移管を図りたいとの考えを明らかにしました。
一方、民主派勢力は、軍が実施を目指す総選挙は『違法で不正だ!』と強く反発しており、未だ、各地で軍と
民主派武装勢力との戦闘が続いており、先行きは不透明と言えます。強い仲介者が出現すれば、実現するのか?
【人身売買】
先日、中国江蘇省徐州市で首に鉄輪をはめられた女性が見つかり、人身売買と虐待が深刻化している事が知られ
ました。この女性はミャンマー人でした。国内紛争により失職し、生活に困窮したミャンマーの女性を言葉巧みに
連れ出し、拉致し、結婚相手が少ない中国人男性の妻に売りつける人身ビジネスが盛んになっています。
私が2016年に、中国とミャンマーとの国境の町、雲南省瑞麗(Ruili-ミャンマー最北東・Museの更に中国より)
に、チーク原木の密輸入の実態調査に行った際に、瑞麗のホテルでミャンマー人と思しき女性数人を引き連れた
男性グループと出会いました。現地通訳は昨夜密入国させた女性たちで, 今夜にも中国人男性に売り渡されると
と言っていた事を思い出しました。*添付写真をご参照下さい
【日本企業の動向】
コロナ禍によりミャンマー経済は大きく落ち込みました。更に急激に進行した対ドルのチャット安への対応策と
して、外貨流出の抑制目的で金融・貿易規制が行われ、ビジネス環境は大きく変化、厳しい事業運営を強いられて
いますが、大卒者の平均月収が3万円前後という低賃金構造が競争力を生み、インフラや通貨不安に阻まれつつも、
労働力と低賃金を盾に、将来に展望を持ち、事業は縮小しても、撤退せず頑張っている企業が多いようです。
以前、スーパーには日本製やヨーロッパ製の品物が沢山有りましたが、今は中国製かタイ産の製品ばかりに
なっている事を寂しく思います。
【為替の動向】
ミャンマー中央銀行のオフィシャルレートは2,100チャット/us$です。イラン/イスラエル紛争が始まった時には
一時的に高騰しましたが、7月に入った頃には、6月下旬のレベルに戻りました。
市場では一時的に4,500チャット/us$になりましたが、7月7日には4,300チャット/us$に落ち着きました。
(150円/us$とすれば0.033円/チャットになります)
【ガソリン価格】
6月中旬のレギュラーガソリンの価格は2,900チャット/リッター(95.7円/リッター)でしたが、イラン/イスラエル紛争が
始まった下旬には3,030チャット/リッター(100円/リッター)に上がり,最高価格は3,210チャット/リッターになりましたが
7月7日現在は3,100チャット(102.3円/リッター)になっています。
【お米の価格】
お米の市場価格は5~6月では殆ど変わりは有りません。お米はus$や金と同様政府がコントロールしています。
スーパーマーケットでは、最上級のお米(Paw San Mhwe)が5,200チャット≒172円/kgで売られています。
【食用油の価格】
ミャンマーの食用油の主流はピーナッツ油とパーム油です。家庭ではピーナッツ油を使用し、業務用としては
パーム油を使用する事が多いです。これ等の価格には大きな変動は有りません。
ピーナッツ油=20,000チャット/Viss(1,65kg)≒400円/kg, パーム油=12,000チャット/Viss≒240円/kg
【鶏卵の価格】
4月頃より高くなっています。サイズ(小)で450チャット、サイズ(中)で480チャット、サイズ(大)で500チャットです。
12個詰めパックは6,000チャット=198円/パックでした。他の食材と比較すると高価です。
日本のスーパーマーケットの価格と大差ないようです。
【停 電】
ミャンマー国内の電気供給は水力発電に頼っています。雨期のこの時期には夏場(3月~5月)より、停電時間は
かなり減ります。ヤンゴン市内はタウンシップによりますが、3~5日程停電が無い時も有るようです。
雨で気温が下がり、家庭でエアコンを使う頻度が減った為と思われます。
【トランプ関税の影響】
7月7日付けでトランプ大統領から軍政府トップのMin Aung Hlaing宛に、関税40%の通知エレターが
送られてきました。ミャンマーから米国に輸出している製品は少ないので大きな影響は無いと言われています。
【チーク材の動向】
ミャンマー政府は、チーク材の米国・欧州への輸出を制限しています。その為、原木は木材公社の貯木場に潤沢に
貯木されています。高樹齢の原木が確保出来るチャンスですが、国連機関から伐採制限を課せられておりますので
今後は現在より原木不足になると思われますが、早期に原木を確保し、ご注文には高品質の製品をご提供するよう
努力したいと思っています。
【ミャンマーチーク材入荷と新規発注状況】
【1:MTH53の入荷】
3月に発注した(MTH53)製品が7月末に入港します。
製品は5月に生産完了していましたが、首都ネピードの林業省事務処理機材が地震で大きなダメージを受け、
その復旧に手間取り、輸出許可証の発行が遅れた為、ヤンゴン港出港が1ヵ月遅れましたので、
名古屋港着が7月末になりました。
ご使用予定のP/J様には申し訳なく、お詫び申し上げます。
【2:MTH54の発注】
発注予定:7月20日 船積み予定:9月10日 名古屋港着:10月20日着
塗装期間:11月上旬
客様お届け:11月20日以降
【主要発注製品】
- 1:注文住宅用床材とテラスデッキ材
1)T15×W120 ×L909mm・OPC, 250㎡
2)T20×W120×L1,800mm・OPC, 70㎡ - 2:注文住宅用床材と天井・軒天井材
1)T15×W90×L1,820mm・OPC, 370㎡
2)T6×W100×L900~1,500mm・OPC, 400㎡ - 3:注文住宅用床材
1)T15×W120×L1,820mm・OPC, 120㎡
2)T15×W90×L909mm・OPC, 240㎡ - 4:計画発注
1)T15×W90×L1,820mm・UNI, 150㎡
2)T15(10+5)×W75×L909mm・UNI, 100㎡ *LL45遮音材
【次船発注予定と内訳】
発注:2025年10月下旬 船積み:2025年1月中旬 国内入港:2025年2月下旬
『ミャンマー(ヤンゴン)情報・7月』 巻末